果樹園と受粉

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果樹園の受粉とは、花粉がミツバチによって花から花へと運ばれることです。多くの果樹では、収量や果実の大きさ・形がこれに直接左右されます。養蜂家にとって果樹園は、早春に蜂群を急速に発達させる蜜源・花粉源であり、受粉サービスの収入源でもあります。最大のリスクは開花期の農薬散布です。このページでは、搬入のタイミング、巣箱の数と配置、農薬散布への対策、受粉契約について解説します。

果樹の受粉はなぜそれほど重要なのか?

多くの果樹品種は自家不和合性です。自分の花粉では受精せず、別品種の花粉を必要とします。そのため果樹園では主品種の間に受粉樹を植えますが、二つの品種の間で花粉を運ぶのは主にミツバチです。

受粉は果実の数だけでなく、果実の形と重さも決めます。リンゴのように胚珠の一つひとつが別々の花粉粒で受精する必要がある果樹では、受精が不十分な果実は小さいままで、片側がいびつに育ったり早期に落果したりします。果樹園に十分なミツバチがいることは、収量だけでなく品質の問題でもあるのです。

アーモンドの花に近づく花粉を付けたミツバチ
アーモンド(Prunus dulcis)は一年で最も早く咲く果樹の一つです。多くの品種が自家不和合性のため、ミツバチへの依存度が非常に高くなります。写真:sam.romilly / Wikimedia Commons · CC BY 2.0
リンゴの花で花粉を集めるミツバチ
リンゴ(Malus domestica)の花で働く働き蜂。リンゴでは、よく受粉するほど実が充実し、形の整った果実になります。写真:Matt Pelikan / Wikimedia Commons · CC BY 4.0

どの果樹がどれくらいミツバチに依存しているのか?

下の表はおおまかな目安です。開花時期は地域、標高、その年の天候によって変わります。地中海沿岸と内陸部では1か月以上の差が出ることもあります。自家不和合性も品種によって異なるため、ご自分の果樹園の品種については農業技術者に確認してください。

果樹開花期(トルコ、おおよその範囲)ミツバチへの依存度養蜂家へのメモ
アーモンド(Prunus dulcis)2月~3月非常に高い(多くの品種が自家不和合性)寒い時期に重なる。強群が必要。花粉が豊富
アンズ(Prunus armeniaca)3月~4月上旬中程度(多くの品種が自家結実性)早い時期の花粉源・蜜源
サクランボ(Prunus avium)3月~4月高い(多くの品種が自家不和合性)受粉樹とミツバチの両方が必要
サワーチェリー、スモモ3月~4月品種により中~高良質な花粉と蜜
セイヨウナシ(Pyrus communis)3月~4月高い蜜の糖度が低く、ミツバチが他の花へ移りやすい
リンゴ(Malus domestica)4月~5月高い園内の下草の花にミツバチが引き寄せられることがある
マルメロ(Cydonia oblonga)4月~5月中程度花は一つずつ、まばらに咲く
柑橘類(Citrus)3月~4月(地中海地域)品種により低~中蜜が非常に豊富で、はちみつが採れる
ビワ(Eriobotrya japonica)秋~冬(沿岸地域)中程度真冬の貴重な蜜源

柑橘類には特別な事情があります。一部の種なしマンダリン品種では、他家受粉によって果実に種ができてしまうことがあります。こうした果樹園では生産者がミツバチを望まない場合があるので、巣箱を置く前に必ず話し合ってください。

ナシの花で蜜を集めるミツバチ
マメナシ(Pyrus calleryana)の花に来たミツバチ。ナシの花は赤みがかった葯ですぐに見分けられます。果樹のセイヨウナシは蜜が水っぽいため、近くにもっと魅力的な蜜源があるとミツバチはそちらへ向かいます。写真:Stan Rullman / Wikimedia Commons · CC BY 4.0
スモモの花に近づく花粉を付けたミツバチ
スモモ・サクランボの仲間(Prunus)の花に来た、花粉を付けたミツバチ。この仲間は早春の主要な花粉源です。写真:Shirley Zundell / Wikimedia Commons · CC BY 4.0

巣箱はいつ果樹園に搬入すればよいのか?

果樹の開花期間は短く、多くの種類では一本の木の花が1~2週間で咲いて散ります。そのためタイミングが決め手になります。

  • 早く搬入しない:開花前に搬入した蜂群は周辺の別の蜜源(タンポポ、カラシナ、野の花)に慣れてしまい、果樹へあまり行かなくなります。
  • 適切な時期:一般的には、花の約5~10%が開いたときに巣箱を搬入します。ナシのようにミツバチにとって魅力の薄い果樹では、開花がもう少し進んでから搬入してもかまいません。
  • 輸送:蜂群は夕方、蜂が巣箱に戻ってから運びます。翌朝の飛行で、すでに咲いている果樹園といきなり出会うことになります。
  • 搬出:花弁が落ちたらすぐ、最初の農薬散布の前に巣箱を運び出します。

天候も決定的です。涼しい日、風の強い日、雨の日にはミツバチはあまり飛びません。開花がそうした週に重なると受粉が不十分になります。その場合、短い晴れ間に十分な外勤蜂を送り出せるのは強群だけです。

受粉には巣箱がいくつ必要で、どう配置するのか?

必要な巣箱の数は、果樹の種類、植栽密度、周辺の野生ハナバチ、蜂群の強さによって変わります。リンゴ、ナシ、サクランボでよく使われる出発点は1ヘクタールあたり強群2~3群です。アーモンドのように密植で早く咲く果樹園ではさらに多く使います。数よりも蜂群の強さが大切で、弱群2群では強群1群の働きはできません。

  • 分散させる:蜂群を1か所にまとめず、園内に小さなグループに分けて置きます。どの木もグループから遠くなりすぎないようにします。
  • 日当たりと風:朝日が当たり、風を避けられる場所を選びます。日の当たる巣箱は朝早くから飛び始めます。
  • 水:園内にきれいな水がないと、ミツバチは農薬の残留があることの多い水たまりから水を集めます。給水場や給水器を置いてください。
  • アクセス:トラクターや散布機の通路から離れていて、しかも養蜂家が車で近づける場所を選びます。
ナシ園の果枝の奥に並べられた巣箱
ナシ園に置かれた巣箱。木々の間の、日が当たり車で近づける場所に一列に並べられています。写真:Rody09 / Wikimedia Commons · CC BY-SA 2.0

受粉用の蜂群はどう準備するのか?

  1. 強い状態で越冬させる:受粉に出す蜂群は、秋に十分な貯蜜と健康な越冬蜂を持って冬に入る必要があります。
  2. 未封蓋の蜂児があること:未封蓋蜂児のいる蜂群はより多くの花粉を集めます。受粉の仕事をするのは花粉を集める蜂です。
  3. 必要なら刺激給餌:開花前の数週間、薄い砂糖液を与えると育児が活発になります。流蜜が始まったら給餌をやめます。
  4. 健康チェック:バロア寄生の多い蜂群や病気の蜂群は持ち込まないでください。役に立たないうえ、病気を他の蜂場へ広めるおそれがあります。
  5. 輸送の準備:巣箱の各部を固定し、換気を確保し、巣門は輸送の直前に閉じます。

開花期の農薬散布からミツバチをどう守るか?

果樹園に搬入した蜂群を最も脅かすのは、開花期の農薬散布です。ミツバチは散布された花を見分けられません。中毒は大量死につながることもあれば、外勤蜂が静かに姿を消すだけのこともあります。

  • 法的な通知:トルコでは養蜂規則により、作物を生産する農家は防除を始める前に地域の農業当局と村・地区の長に知らせ、周辺の養蜂家にも散布計画を事前に周知します。養蜂家の側にも、自分のいる地域の散布計画を当局に確認する義務があります。
  • 花に殺虫剤を使わない:ミツバチに有毒な製品は開花期に使うべきではありません。どうしても必要な場合は、ミツバチが飛ばない夕方を選び、製品ラベルのミツバチに関する注意に従います。
  • 下草を刈る:散布前に木の下の花を付けた草(タンポポ、カラシナ、クローバー)を刈っておくと、ミツバチが散布区域に引き寄せられるのを減らせます。
  • 混用に注意:一部の殺菌剤と殺虫剤を一緒に使うと、ミツバチへの毒性が高まることがあります。
  • 巣箱を閉じるときは注意:散布日に巣箱を閉じる場合は換気を確保します。暑い日に完全に閉じた巣箱では蜂群が窒息することがあります。可能なら蜂群を一時的に移動させる方が安全です。
中毒が疑われるとき:巣箱の前の死んだ蜂や震えている蜂を写真に撮り、日付と場所を記録し、死んだ蜂を清潔な容器にたっぷり集めて冷凍し、家畜保健衛生所に届け出てください。サンプルと記録がなければ被害を証明するのは困難です。

受粉契約には何を盛り込むべきか?

書面の契約は双方を守ります。少なくとも次の項目を含めてください。

  • 蜂群の数と強さ:例えば「蜂の付いた巣枠6~8枚以上、蜂児のある蜂群」のような測れる定義。
  • 日程:搬入と搬出の時期。基準として暦の日付の代わりに開花率を書いてもかまいません。
  • 配置とアクセス:巣箱の設置場所、車両の通路、盗難や動物に対する安全対策。
  • 水源。
  • 農薬散布の条件:開花期間中はミツバチに有毒な散布をしないこと、やむを得ない場合は事前に知らせること、この取り決めが守られなかったときの責任の所在。
  • 料金と支払い:巣箱1箱あたりの料金、支払い時期。

最も重要なのは農薬散布の項目で、トラブルの大半はここから生じます。

果樹園は養蜂家に何をもたらすのか?

果樹園は一般に余剰のはちみつをもたらしません。開花期間が短く、蜂群は集めたものを自らの発達に使うからです。例外は柑橘類で、地中海地域では柑橘の開花でほとんどの年に採蜜できるはちみつが得られます。

本当の利益は二つあります。早春の豊富な花粉による蜂群の急速な発達と、受粉料です。開花が終わると果樹園はミツバチにとって何もない場所になり、蜂群が急速に大きくなっているため分蜂のリスクも高まります。果樹園の後に蜂群をどこへ移し、どう管理するかを前もって計画しておきましょう。

受粉後に育ち始めた若いリンゴの果実
受粉・受精の後に育ち始めたリンゴ。整ったバランスのよい形は、十分な種子ができたしるしです。写真:APHA (National Bee Unit), Crown Copyright · Open Government Licence v3.0 (Crown Copyright)

生産者とよい関係を築くには?

受粉が収量にどれほど貢献するかを生産者に伝えることが、長期的な協力の土台になります。ミツバチから利益を得ていると実感した生産者は、農薬散布にもより気を配るようになります。果樹園の縁にあるサンザシ、野生のスモモ、花の咲く生け垣を残すよう勧めれば、野生ハナバチとミツバチの両方を支えることができます。

サンザシの花で蜜を集めるミツバチ
サンザシ(Crataegus monogyna)のような生け垣や林縁の植物は、果樹の開花後にミツバチへ蜜源を提供し、野生の送粉者に営巣場所を与えます。写真:Victor Heng / Wikimedia Commons · CC BY 4.0

よくある質問

果樹園10アールあたり巣箱はいくつ必要?

一般的な出発点は1ヘクタール(100アール)あたり強群2~3群で、おおよそ30~50アールに1群となります。アーモンドのような密植園や野生ハナバチの少ない場所では、さらに多く必要です。

巣箱は開花前に持っていく方がよいのでは?

いいえ。早く搬入したミツバチは周辺の別の花に慣れてしまうことがあります。花の約5~10%が開いたときに搬入するのが、たいてい最もよい結果になります。

果樹園からはちみつは採れる?

ほとんどの果樹では余剰のはちみつは採れず、利益は蜂群の発達です。ただし柑橘園では、よい年には色が淡く香りの高いはちみつが採れることがあります。

生産者が開花期に農薬を散布したらどうすればいい?

証拠(写真、死んだ蜂のサンプル、日付)を集め、村・地区の長に調書を作成してもらい、家畜保健衛生所に届け出てください。翌年からは書面で契約を結びましょう。

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